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企業インタビュー(7):株式会社Helte

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株式会社Helte(ヘルテ)は日本の高齢者と世界の日本語学習者が繋がるオンライン・コミュニケーション事業を行っており、2018年10月に日本のシニアと海外の日本語学習者が日本語でビデオ通話を行う「Sail」(セイル)のAndroid/iPhone用スマートフォン・タブレットアプリを正式にリリースしました。7回目になる今回は株式会社Helte代表取締役を務める後藤学氏にインタビューしました。

―― おおまかな事業内容をおきかせ下さい。

一言でいうと、日本の高齢者と世界の日本語学習者が繋がるオンライン・コミュニケーション事業を行っています。私たちはSkipeのようなチャットを独自に開発し、オンラインによる日本語教育サービス「Sail」を運営しています。高齢者住宅に入居している比較的自立しているシニアの方々にとって日本語で自分の経験や日本の文化を話すことが生きる楽しみの一つになったりする一方、世界の若者の夢を叶える一歩を支援すべく海外の学生はヒアリングやスピーキングの練習ができると同時に日本の文化や考え方を学ぶことができます。

現在、海外の学生は、タイの大学で日本語を学ぶ学生が中心です。今後はベトナムの公的教育機関にも事業展開していきます。タイやベトナム以外でもアメリカやヨーロッパからの個人参加もあり、既に1500人以上の若者がこのシステムに登録しています。今のところ18の高齢者住宅事業者がこのシステムを導入しています。現在の事業では福祉施設に入居されているシニアが日本語を教えていますが、今後は一般家庭にお住まいのアクティブシニアにも広げていきます。既にアプリは開発しており、今でも個人での参加は可能です。

―― どのようなビジネスモデルなのかを教えてください。

高齢者住宅からシステム導入費用を頂いております。高齢者施設にはカラオケやオリガミなど色々なアクティビティがありますが、その一環としてアカデミックでありオンラインを通じた社会参加もできるということで弊社のシステムを採用して頂いています。また海外の学生からは、1.2ドルから1.5ドル程のレッスン料を頂いています。1回当たり25分間の会話ですが、このサービスを利用する現地の学生にすると、お昼ごはん1回分くらいの値段です。

―― どのようにしてこのような仕組みを思いつき作られたのですか。

自分自身の二つの経験からです。一つは海外での経験です。大学時代にアメリカワシントン州の大学に1年間、その後インドのゴアに半年ほど交換留学しました。2回の留学はたいへん印象深いものでしたが、特にインドでの生活は私にとって衝撃的なものでした。貧困率が20%を超えるなかで貧富の差は激しく、カースト制度も残っている。そのような環境で半年間生活しているなかで、自分なりにどうしたらこの環境を変えられるかを考えました。日本では両手に余る程の機会や選択肢を自分では当たり前のことと捉えてきたことにショックを受けました。自分にできることはなんだろう、貧困をなくすために何ができるかを考えた時に、いくらお金を寄付されてもお金の使い方がわからないという現地の人が沢山いることを目の当たりにし、教育という根本的な問題を解決することが重要だと認識しました。しかしその時は何もできずに帰国しました。

教育に対するモヤモヤ感が残る中、その後バックパッカーとして30カ国くらいを放浪しました。その放浪先の一つが東南アジアでした。そこで驚いたことは日本という存在が現地で高いということでした。先人の方が築いてくれた信頼だとか、日本人が建てた橋とかビルがあって、私自身、東南アジアの多くの方々にたいへん良くしてもらいました。また日本語学習者の多さにも驚きました。よくよく話を聞いてみると、日本人と実際に話す機会がない、インドのように学校にすら行けない人がいるということでした。日本が大好きで日本語を勉強しているのに、実際は日本人と話す機会に恵まれていないのは残念だなと感じて帰国しました。

二つ目の経験は、ウェブを使い英語を習ったフロリダのおばあちゃんとの貴重な体験です。2度の留学と放浪旅行を経て、帰国後は破産状態になってしまいました。せっかく鍛えた英語力も維持できず異文化に触れる機会もなく、もどかしい気持ちになりました。その時に母親が、アメリカ在住でインターネットを通じて英語を喋れる人を探してくれ、フロリダ州のおばあちゃんを紹介してもらいました。そして彼女とSkipeを通じて話すことになったのです。当時はもちろん若い人と話した方がずっと楽しいだろうと思っていて、殆んど期待せずに話してみたところ、いい意味その期待を裏切られました。英語のスキルに加え、彼女の人生経験や哲学そしてアメリカの文化や歴史を学ぶことができたのです。アメリカ留学時代に公民権運動について興味を持っていたのですが、彼女は若い頃にこの時代の過渡期を過ごしており、黒人がどう立ち上がり歴史を変えていくかを、また当時彼女はこう考えてこう思ったとか、そういう貴重な経験を聞くことができました。彼女の経験を聞くことで自分が過去にふれているような温かい体験をすることができたのです。

その後、社会人になり独立して新たなビジネスモデルを考える中で、海外で経験した教育の大切さや東南アジアでの日本語教育の現状、アメリカのおばあちゃんに習った英語学習の経験などが頭の中に蘇りました。それらの経験と日本の高齢化問題などが一緒になり、このような発想が生まれました。

―― 教えるシニアの方々の反応はいかがですか?また教わる海外の若者の反応も教えてください。 

シニアの方々の反応には2パターンあります。一つは海外の駐在経験や旅行が好きだった人はすんなりと入れ、すぐに会話が楽しいと感じます。一方、外国人と話したことがない人や海外に行ったことがない人の中には、新たなチャレンジに対して緊張で手が震えたり、涙ぐむ人もいます。そういった方々も何回か会話すると、結果、会話を楽しめるようになる人がでてきます。もちろん一定数のシニアのなかにはこのようなことはやりたくないという方はいますが、会話を楽しむ人は多いです。また学生は日本語で一生懸命話そうとするので、お互いの会話は成り立ちます。わからないことがあれば、学生たちは「それはどういう意味ですか?」と言葉を変えて尋ねてきます。お年寄りもこのような会話が脳トレのような脳の刺激になると思っておられ、そういった緊張感は施設ではなかなか味わえないと思います。ありがとうと言うことはあっても、言われることはない。ある意味で、社会参加の側面を持っているプロジェクトだと思うので、なるべく多くのシニアの方々に参加して頂きたいです。

また、日本語を学ぶ海外の学生の反応を聞いてみると、おじいちゃん、おばあちゃんを喜ばせたいという意見がでてきます。というのも彼らの国における平均寿命は日本に比べるとずっと短いので、おじいちゃん、おばあちゃんと生活した記憶がない若者がいたりします。自分のおじいちゃん、おばあちゃんのような感じで、日本語を話しながら彼らを喜ばせたいということです。日本のおじいちゃん、おばあちゃんに会いたいという学生が出てくるようになり、実際に留学やインターンで日本に来た際に施設に会いに来た学生もいます。手紙を送る学生もいますね。

―― 様々な内容の会話のなかで日本語を学ぶ側からの質問が比較的多いように思われますが、シニアが日本語を教える際に御社は何か事業サービスにおいての注意点などルールを作成されているのでしょうか。

教材を独自に開発しようと考えています。フリートークで話すこともできますが、そうではなくある一定の共通の話題もあった方が良いというシニアの方もおられます。今後、海外の大学と協力したり、国内の教育分野の専門家に参画頂いて開発していこうと考えています。その方が学生は効率的に学べますし、シニアは教えるノウハウが身につきます。シニアの方は本当にたくさんの経験をお持ちですので、それをどう活用するかが、この事業のカギになると思っています。長年の会社勤務でたくさんの経験を積まれている方がいらっしゃいます。例えば自動車メーカーでしたら、ものづくりの精神を教えて頂きたいです。一方でシニアも学生から海外の文化や現地で流行していることなど学べることはたくさんあります。お互いが学びながら刺激しあって元気になっていけるような教材が今後必要であると考えています。

―― この事業を遂行していく上で課題はありますか?

事業に参加していただける 高齢者住宅の数を増やしていくということが一番の課題です。良くも悪くも新規性、独自性が高い事業なので、啓発活動していくのに多くの時間を費やしました。海外の人とお話をすることによって、本人の社会的、精神的健康に寄与できますよと色々なアプローチで説明するのですが、なかなか理解してもらえません。ですから当初は本当に好奇心旺盛で理解していただける一部の方々を中心に参加してもらっていたのですが、少しずつメディアにも露出されるようになり、事業の正当性が高まってきました。参加されるシニアの数をどんどん増やしていきたいので、大きな介護施設での導入実績もしっかり作っていきたいと考えています。

―― 今後の事業展開や抱負を訊かせてください。

来年5月までに国内100以上の高齢者施設に弊社のシステムを導入することを考えています。マザーズに上場している株式会社カヤック(面白法人カヤック)との提携を機にシステム導入が少しずつ浸透していく手応えを感じています。あとは雪だるま式に増えていくことが予想されるため、あと少しの踏ん張りどころだと考えています。チームの結束力を高め、しっかりと基盤をつくり、もう一歩前へ進んでいきたいです。

現在、外国人労働者の受け入れ拡大に向けた法案が国会で審議されています。今後、外国人労働者が増えていく中、日本はまだ充分な受け入れ体制が整っていないと思っています。せっかく外国の方が日本に来ても、日本人と外国人の分断が起きるのはとても残念です。日本人と外国人お互いの間には大きな壁はないと考えていますので、両者にどのように橋渡しができるかが大切だと思っています。このプロジェクトを活用して、ぜひシニアの人たちに海外の学生をサポートしてもらい、双方が理解しながら多様性がどんどん促進されていくような社会づくりの一助になれればと考えています。

本日はありがとうございました。

 

2018年11月(株式会社Helte 本社にて)

後藤 学(ごとう まなぶ)
株式会社Helte
Sailプロジェクト
代表取締役

(敬称略)

 

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