◇定年引き上げ・廃止の企業増
少子高齢化で生産年齢人口(15~64歳)が減少していく中、高齢者の活躍の場を広げるため、従業員の定年を引き上げたり、定年制を廃止したりする企業が増えてきた。高齢者の就業を促す企業の実情を探った。(道念祐二)
「気分はどうですか?」。宇治市の高齢者福祉施設で、職員の沢田玉美さん(71)が車椅子の女性の表情を確認しながら優しく声をかけた。
電子部品の検査を手がける「マイクロ」(宇治市)が営む小規模多機能ホーム「まごころ大久保」。同社は検査事業の縮小に伴い、2001年に介護事業に進出した。1972年の会社創業時から働く沢田さんは8年ほど前、介護事業部に移り、利用者の入浴や着替えの介助、トイレへの誘導などに従事する。
従業員約200人のマイクロは約10年前、60歳だった定年を65歳に引き上げ、5年前にはさらに70歳とした。沢田さんを含め70歳を超えるパート社員が3人おり、正社員の最年長は64歳だ。経営管理室長の阿比留隆行さん(39)は「介護部門は3年ほど前から人手不足感が強くなっている。定年が60歳のままだったら、現在の従業員数は確保できていなかっただろう」と話す。
同社では、60歳を超える従業員でも毎年、昇給がある。阿比留さんは「昇給額は少ないが、従業員のやる気につながっている。特にケアマネジャーは不足しているので、求人の際、『60歳超でも昇給』を強調している」と説明する。
沢田さんは週4、5日、午前7時から午後4時まで働く。「介護職は人を助ける仕事なので、自分自身が元気でなければならない。前向きに働いていきたい」と力を込めた。
三十三間堂(東山区)近くで「ホテル東山閣」を運営する山陽興業(同)は、約20年前に定年制を廃止した。創業家の当時の社長が「同じフロントを担当していても、若手と年配の社員では経験値が違う」と、定年制廃止とともに正社員全員を年俸制とした。
取締役総務部長の山田與四男さん(69)は「定年制廃止と年俸制で働く意欲を持ってもらえる」と話す。正社員約50人のうち60歳以上は15人で、最年長は73歳の男女2人。男性はボイラー管理、女性は仲居を務める。山田さんは「女性はサービススタッフを仕切る役割も担い、いてもらわないと困る存在。宿泊業の人材は同業他社への転職も多く、60歳超の社員の確保は経営面で重要だ」と強調する。
京都労働局職業対策課は「人手不足感の高まりから高齢者の雇用は今後も進むだろう」と分析している。 
<「継続雇用制度」導入81.2%>
京都労働局がまとめた2017年の府内の高齢者雇用状況調査(6月1日時点)からも、高齢者が活躍する企業が着実に増えている流れが浮き彫りとなる。
従業員31人以上の対象企業2946社のうち2923社(就業規則に明示していないなどの23社を除く)で、60歳以上でも何らかの形態で働ける「継続雇用制度」を導入している企業は2374社(81・2%)。定年を引き上げているのは482社(16・5%)、定年制を廃止しているのは67社(2・3%)だった。
全対象企業の定年制度の導入状況を見ても、高齢者が働きやすい環境が整いつつあることが分かる。定年を65歳にしているのは前年比23社増の437社(14・8%)で、66歳以上としているのは同18社増の45社(1・5%)に上った。正社員や嘱託など雇用形態は問わずに70歳以上でも働けるのは、同53社増の628社(21・3%)と2割を超えた。
総務省によると、17年10月1日時点の日本の総人口(1億2670万6000人)のうち、15~64歳の生産年齢人口は前年比60万人減の7596万2000人で、総人口に占める割合は60%。その一方、65歳以上の高齢者は同56万1000人増の3515万2000人で、総人口の27・7%を占め、過去最高となった。
増加する高齢者は、労働力不足を解消する貴重な働き手として期待されている。

情報源: <NEWS EYE>高齢者 人手不足救う : 地域 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)