◇住民団体の10周年記念 完成
城下町の風情が残る高取町の土佐街道沿いで毎年3月、民家の軒先などに雛人形を飾る恒例行事「町家の雛めぐり」を題材にした映画「雛ものがたり」が完成した。主催の住民団体・天の川実行委員会が、行事10周年を記念して自主製作。四季の風景を織り交ぜながら、住民らが人形に込めた思いを映像化した。
作品は50分で、オムニバス形式。人形にまつわる家族の実話や脚色した物語を、役者が演じて再現した。
ある民家に飾られた市松人形には、戦争に翻弄された母娘の逸話が隠されている。父が出征し、貧しくて雛祭りができない母娘に、戦死の報が届いた。母は幼い娘と心中を決意し、線路に横たわるが、娘が思いとどまらせた……。実際の所有者のインタビューも交えて映し出した。
離婚し、雛祭りをしてあげられなかった母と娘は、民家で老婦人に出会う。家に飾られた雛人形は、老婦人の娘の遺品だった。母は娘と前向きに生きていく希望をもらう。いくつかの実話を脚色して創作した物語だ。 女優の紅壱子さんがナレーターとして進行しながら出演。雛めぐりのにぎわいや、田植えや稲刈りなどの風景を、情感豊かに撮った。
映画は、テレビ番組制作会社「カムコンフィデント」(大阪市西区)を経営する坂本勉さん(54)が監督、撮影、脚本を手がけた。坂本さんは6年前、家庭菜園をしようと知人の紹介で町を訪れた。高知県出身のため「土佐街道」という地名に興味を持ち、当時、天の川実行委代表だった野村幸治さん(76)と知り合ったという。実行委のPR映像を撮るうちに、映画を作ろうと盛り上がり、約2年半がかりで完成した。
「実際に雛めぐりに来た感覚になってもらいたいと思い、ドキュメンタリー映画のように作った」と坂本さん。約100時間に及ぶ映像を撮りため、雛人形への思いが母から娘、孫娘へと受け継がれていくさまを、強調して作ったという。
製作費は約100万円で、町内の企業などから寄付を募った。出演した町民のエキストラや役者ら約150人は、ほとんどがボランティア参加した。
野村さんは「雛人形を飾る家が高齢化で年々少なくなっている。雛めぐりをどう維持するか、この映画が課題を解決する一助になれば」と期待する。 坂本さんは「街の人と触れあうことで元気をもらったという観光客が多い。映画が地域活性化につながるとともに、過疎に悩む他の地域の参考になればありがたい」と話している。
映画はDVDで販売。税込み1000円。問い合わせは天の川実行委(0744・41・6140)。
【町家の雛めぐり】
2007年、定年退職した高齢者らでつくる天の川実行委が企画して始まった。街道沿いの約100軒の古民家などに雛人形を1か月間、展示。今年は町内外から約3万7000人の観光客が訪れており、春の風物詩として広く知られている。

情報源: 高取の雛めぐり 思い込め映画に : 地域 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)