米国で生活する筆者の私事となるが、日本で一人暮らしをしている高齢の母がいる。いつも痛感するのは、親が高齢かつテクノロジー音痴の場合、相手の様子を知ったり、コミュニケーションに使えたりする手軽なテクノロジーは意外と少ないことだ。
もう10年近く前に使ってみたのが、スカイプ機能が搭載された新型テレビだった。テレビ画面の端で、こちらからの呼び出し中のマークが点滅して信号音が鳴る。ただ、テレビの番組に熱中してか、信号に気づかないことが多かった。
信号に気づいても問題は操作のインターフェースだ。リモコンのボタンをいくつも押さなければ、ビデオ会議を受けることができないのだ。そんな面倒もあって、このコミュニケーション手段は使わなくなってしまった。
次に試したのは、小さなおもちゃのロボットである。キャタピラの上にカメラが載っていて、インターネット経由で操作が可能。どの部屋にいてもロボットを操作して動かせばいいし、相手の様子はカメラを通して見られる。こちらの声も届く。そう考えて300ドル近くした製品を日本に持ち帰ったのだが、母は「そんなものに追跡されるのは嫌だ」。すぐさま却下された。
こうしたなか、数カ月前に母に渡したのが、人工知能(AI)スピーカーのグーグルホームだ。音声で電話をかける機能もある。ところが、母には始動させるための「ねえ、グーグル」という言葉がどうしても覚えられない。「グーグル」は、ネットを使わない高齢者には何の意味もなさない単語だとわかった。
そうして1カ月ほど前にようやくたどり着いたのが、アマゾン・エコー・ショーである。アマゾン・エコーにスクリーンが付いたものだ。
英語版ならば、「ドロップイン(呼びかけ)」というテレビ通話機能が使える。日本では未対応だが、同機能は、こちら側のアプリでエコー・ショーのカメラを起動させるもの。セキュリティーカメラに似ているが、こちらの様子も相手から見られるのでテレビ通話になるのだ。
これが高齢者とのコミュニケーションに最適と知ったのは、7月のアマゾン・プライムデーだった。同製品に「高齢の親とのやりとりに、これほどぴったりなものはない」とのレビューが何件も出ていたのだ。
母はまだ認知症の気配もなくしっかりしているが、新しい機器の操作やわかりにくいボタンを押したりするのがますます苦手になっている。その点、ドロップイン機能は相手の操作が不要で、こちらからいきなりテレビ通話を始めることができる。こんなちょっとしたことが我が家の状況には救世主になるのだ。
母側にとっては、音で呼び出されるのではなく、エコー・ショーから呼びかける筆者の声が聞こえる。まるで訪ねてきたように感じるはずだ。
そういうわけで、現在はこちら側がクリック2回、母は何もせずにテレビ通話が可能になった。家族間デジタル・デバイドが少しだけ解決されたところだ。

情報源: 高齢者に優しいIT機器って? 難しい操作、意外に多く:日本経済新聞