「人生100年時代」。政府に言われるまでもなく、国民の間ではさらなる高齢化社会を前提に、もし自分が長生きした場合のお金の問題に対する危機感が強まっている。このほど「定年後のお金 寿命までに資産切れにならない方法」(講談社)を出版したフィデリティ退職・投資教育研究所所長の野尻哲史氏は「単純な運用だけでなくあらゆる手を駆使し、資産寿命を延ばしていかなければならない」と説く。

■総資産で「利回り3%」意識
――長生きしたときに備えて資産寿命を延ばすコツは何でしょうか。
「公的年金を含め、あらゆるものを動員して長生きのリスクをカバーしなくてはいけない。死ぬときに長生きしてよかったと思うためには、運用するだけでなく定年後も働き続けたり、お金の使い方を工夫したり、生活コストのかからない地域に移り住んだりと総合的にアプローチする必要がある。その必要性を訴えたくて今回、本を書いた」
――本の中では人の生涯を、資産形成を進める「山の登り」と引き出しながら運用する「山の下り」に分け、山の下り部分では「年率3%で運用しながら一定比率での引き出し」を訴えています。具体的には。
「ある程度の年齢を重ねてからリスクをとって運用するのは(損失発生時の立て直しが難しいため)おすすめできない。より安全性を重視し、そのうえで運用利回りは年率3%を目指したい。一方、資産を取り崩してお金を引き出す割合については議論の分かれるところだが、普通の人は4%前後と考えればいいだろう」
「利回り3%は現預金を含めた自分の資産全体で考える。どの程度リスク資産に回せるかにより、投資対象に求める利回りも変わってくる。年齢によっても異なる」
 「定年などをへて、収入が減るかなくなりがちな高齢者は資産に占める現金比率は低くなってくるはずだ。若いころはいろいろと物入りで現金比率が高めになるので、投資信託などの目標利回りを高くしなければ総合成績『3%』は難しい。だが年齢を重ねれば重ねるほど高いリターンを求めずとも良くなる」

■若い世代は年収の一定比率積み立てを
 ――「利回り3%」のために必要な心構えと、制度上必要と思われることは何でしょうか。
「まず『いい商品はない?』と漠然と金融機関の窓口で尋ねるのはやめよう。いくら運用に回したいのか、3%の総合利回りを達成するためにどのような商品を選んだらよいのか問いかけ、きちんと答えられる担当者を選ぶところから始めてほしい」
「政府は高齢者の資産運用を、社会保障制度の一環として位置づけるべきだと考えている。『社会保障で年金を払うよりも自助努力を促す税制優遇の方が国の負担は長期的に少ない』、『確定拠出年金(DC)よりも個人貯蓄口座(ISA)のほうが国の税負担は少ない』といった議論を活発にし高齢者の自助努力を促さなければならないだろう」
 ――若い世代は「定年後」に向けてどのように備えておくべきでしょうか。
「若い人たちは定年後の話をするとき、まとまったお金を用意しなければならないと力んでしまう。ただ退職後も運用を続けたり、生活コストを抑えたりできる。そのことを前提に現役時代にいくらためたらいいのかという目標をたて、30~40代は焦らずに積み立て型で資産形成すべきだ」
「『定年後のお金』では年収や資産形成比率、退職後の生活資金などの条件を入れ、退職後に必要な生活資金の総額を求められる計算式を紹介した。ポイントは資産形成期に年収の『一定額』ではなく、『一定比率』を資産形成に回すことだ。これを預金や投資信託などにバランスよく振り向け、全体で3%の利回りを目指してほしい」
「若い人は(キャリアアップなどで)年収を変えられる。20代は無理に資産形成はせず、30歳以降に年収を上げられるように自分への投資をすることも重要だ」

情報源: 人生100年、あらゆる手で資産寿命延ばせ 野尻哲史氏|マネー研究所|NIKKEI STYLE