南米ベネズエラなど、通貨安から急速な物価上昇が発生し、市民生活が大混乱しているとの報道を目にするようになってきました。特に、生活の根幹である食料品の価格が急上昇すると、入手が困難になり死活問題になります。こんなとき一番困るのはいつの時代も庶民ですが、現役世代として働けるうちはまだいいかもしれません。
ベネズエラのようなハイパーインフレでなく、インフレ率が通常の範囲であれば、現役の就労者は給料や賃金が上昇して帳消しにしてくれる可能性があるからです。実際には給料や賃金の上昇は食料品価格の上昇よりも抑えられる傾向が強いのですが、定期収入がある分、退職世代よりは不安は感じないでしょう。

■どこの国も年金額の上昇は期待できない
退職世代、つまり年金生活者は年金以外の収入はありません。しかも、どこの国でも年金額の上昇は期待できませんから、就労者よりも困難な状況に追い込まれやすいのです。庶民および年金生活者の視点で物価上昇の歴史をひもといてみましょう。
高インフレの代表事例として挙げられるのが18世紀末のフランス革命時です。革命は近代社会の新たな一ページを開く歴史的イベントとして捉えられていますが、それと同時に市民生活を大混乱に陥れた大変な時代でもありました。
生活者にとっては政治が混乱しても、日々の食べ物は欠かせないので何としても食料品を手に入れなければなりません。しかし、都市であるパリにいつ農村や漁村から食料品が届くか分からないような状態です。商店は食料品を売り惜しみ、その分、価格は急上昇してしまったのです。パリの庶民の生活費は日に日に高騰していきました。一番生活で苦労したのは年金生活者でした。
セレスタン・ギタール著「フランス革命下の一市民の日記」によると、一般的な物価は5年間で34倍、野菜やワインは30倍、小麦は120倍、砂糖は344倍になったとの記述があります。年率に換算すると、一般的な物価は2.02倍(上昇率は102%)、野菜やワインは1.97倍(97%)小麦は2.61倍(161%)、砂糖は3.22倍(222%)となります。
この間、年金がほとんど増えなかった年金生活者の生活は火の車になったことが容易に想像できます。年金で受け取れる額は、あらかじめ決まっていますから、物価上昇で物やサービスの購買力は低下してしまったのです。1年間で一般的な物価が2倍にもなれば当然でしょう。ワインも2倍近くですから、ワイン好きのパリ市民も禁酒せざるを得なかったかもしれません。

■戦中にも食料品の闇価格は高騰
1920年代前半のドイツのハイパーインフレほどではないものの、我が国も第2次世界大戦後に急激なインフレを経験しています。しかも、戦後だけでなく、戦中にあっても実際の食料品価格は闇価格ベースでは上昇していたようです。これは今年8月発表された新たな研究論文(鎮目雅人著「第二次世界大戦中の日本における闇価格の形成について」)で明らかになりました。・・・

情報源: インフレは年金生活者を直撃 資産形成を(平山賢一)|マネー研究所|NIKKEI STYLE