<研究重ねて開発>
「本格的な味わいだ」「お店で出しても大丈夫」
秋田市で7月中旬に開かれた介護食の試食会。ほのかにだしの香りが広がる室内で、高齢者ら約10人が笑顔で食事を楽しんだ。
主催したのは医師やケアマネジャー、介護士らが2月に結成した「秋田食介護研究会秋田市支部(通称AFCA)」。一人一人が人生の締めくくりまで食事を楽しめる地域社会を目指し、飲食店で提供できる介護食の開発に取り組む。
試食会で披露した「贅沢粥(ぜいたくがゆ)」は、通常の3倍の量のかつお節で香りを強め、米粒は舌と上顎でつぶせるほどの軟らかさ。イクラなどを添え、「いかにも介護食」というイメージがなくなるよう工夫を重ねた。
「やっと思いが形になって見えてきた」。代表の元看護師山田綾子さん(34)が歩みをかみしめる。
医療施設に10年以上勤め、食べる力が弱まる高齢者らと向き合ってきた。流動食に抵抗感を抱いたり、飲食店で食べられるメニューがなく外出を控えたり。食べる意欲の喪失が孤立感を深める引き金になる現実にもどかしさを感じた。
「食事を楽しめなければ、生きる力が衰えてしまう」と山田さん。2007年から秋田県南を中心に口腔(こうくう)ケアや食事を通じた健康の在り方を啓発している秋食介護研究会(東成瀬村)で学び、有志と一緒にAFCAをつくった。
慢性的に人材不足の医療現場は忙殺され、家族は介護に疲弊する。支えの手が届かないまま、体が衰えて嚥下(えんげ)障害を繰り返し、胃ろうによる栄養摂取に切り替えるなどの対応を迫られる高齢者は少なくない。

<生きる力後押し>
研究会代表で東成瀬村の歯科医師小菅一弘さん(55)は、そんな現状に違和感を抱いてきた。
家族と介護医療関係者の連携の重要性を強調し、「食事の際に体を傾けるなど工夫をすれば、食べる喜びを味わえた人はいたはずだ」と指摘。その上で「食事による栄養管理に気を使うなど介護される側の意識改革も必要。介護食はその一端を担う」と説く。
AFCAはこれまで、外食向けにチキンナゲットやナポリタン、チャーシュー麺など6種類を介護食にアレンジした。
目指すのは人とのつながりを生み出し、生きる力を後押しできる新しいメニュー。メンバーは仕事をこなしながら、定期会合で情報共有やアイデアを出し合い、思案を重ねる。
山田さんは「食事は単なる栄養補給でなく、人生の楽しみそのもの。高齢者も障害者も、家族みんなで同じ食卓を囲む温かな景色を守りたい」と思い描く。

情報源:<変わる介護食>高齢県・秋田(下)挑戦 みんなで同じ食卓を|河北新報