私達の生活にとって、もはやなくてはならない存在となっているコンビニ。コンビニの業績は非常に好調です。売上高は増加の一途をたどり、近い将来、スーパーの売上高も上回る可能性も見えてきました。店舗数も来店客数も増加傾向にあり、客単価もじわりと増えています。勢いを増すコンビニですが、その利用者層には何か変化があるのでしょうか。

■コンビニ来店客の高齢化
業界首位でマーケットシェアの4割を占めるセブン-イレブンの来店の状況を見てみましょう。セブン-イレブンの来店客の年齢分布を見ると、1989年から2017年にかけて、20代以下の若者が減り、50歳以上が増えています(図1)。
1989年では20代以下が6割を超えており、「コンビニは若者のもの」でした。しかし、2000年代に入ると20代以下は半数を下回り、2017年では2割にまで減っています。
一方で、50歳以上は1989年では1割未満でしたが、2017年では約4割まで増えています。つまり、1989年から2007年にかけて、20代以下は3分の1に減る一方、50歳以上は4倍にも増えているのです。50歳以上のうち65歳以上の高齢者も増えているとすれば、「コンビニは若者のもの」から「シニアのもの」へと移り変わっている様子がうかがえます。
少子高齢化が進む中で、このような変化は、ある程度は当然とも言えるでしょう。しかし、セブン-イレブンの来店客は人口の高齢化を上回る速度で進んでいるのです(図2)。
1989年と直近を比べると、セブン-イレブンでは50歳以上の割合が4倍に増えていましたが、人口では1.5倍程度にしか増えていないのです。なお、この期間において、セブン-イレブンの売上高や来店客数、客単価は増加傾向にあります。

■高齢単身者の増加と若者のコンビニ離れ
セブン-イレブンの来店客が高齢化している背景の1つには、企業側が戦略的に若者からシニアへターゲット層を変えた可能性があります。
日本では高齢化に加えて、未婚化や核家族化の進行で、今後、高齢単身世帯が増えていきます※1。現在、単身世帯は総世帯の3割超ですが、2040年には約4割となります。また、単身世帯のうち、60歳以上は、現在は約4割ですが、2040年には半数を超えていきます。
コンビニは、もともと高齢単身世帯の生活とマッチしています。コンビニで売られている食品や惣菜は、スーパーと比べて小分けのものが多く、1人暮らしの方が必要な時に必要な量だけを買いやすい作りになっています。また、店舗が小規模ですので、住宅街やマンションの1階などにも多く見られます。遠方まで出歩かずに近所で用事を済ませることができますし、店内もさほど歩かずに済みます。
一方で、かつてコンビニの主力客だった若者は、1990年頃と比べて1人暮らしが減り※2、コンビニで食品などを買う必要があまりなくなっています。また、少子化の影響で単身世帯に占める若者の割合も減り、1990年では35歳未満が約半数でしたが、2015年では3割弱となっています。
さらに、若者の価値観も変容しています。景気低迷の中で生まれ育った今の若者は価格感度が高く、デジタルネイティブであるため情報感度も高くなっています。ディスカウントストアや百円ショップ、格安ネット通販などを利用して、モノを出来るだけ安く買う術に長けています。
若い世代で「コンビニ離れ」が進む一方、1990年代にコンビニ生活に慣れ親しんだ若者は歳を重ねて今では50代に差し掛かっています。このことも来店客の高齢化に影響しているのでしょう。とはいえ、コンビニ側が積極的に、人口が減りニーズが弱まる若者よりも、増加傾向にありニーズの強い高齢(単身)者へと、ターゲットを変更した可能性もあるのではないでしょうか。
例えば、近年、コンビニ各社では、高齢者をはじめ食事や買い物に不便さを感じる消費者に向けて、食事配達サービスや買い物支援サービスを提供するようになっています。このような代行サービスは、増加傾向にある共働き世帯でも強いニーズがあると予想されますが、業界2位のローソンでは、高齢者というよりも、共働き世帯や子育て世帯を主力ターゲットとしているようです※3。

■コンビニの社会インフラ化、身近な暮らしの拠点へ
さらに、コンビニでは生活上のサービスの取扱いが増えています。公共料金や税金の支払い、住民票発行など行政関連サービスの代行、銀行ATMサービス、宅配便やクリーニングの受け取りや預かり、無料Wi-Fiサービスなどにも対応しています。もはや、コンビニは消費者にとって暮らしの拠点の1つとなりつつあります。
特に高齢単身者にとって、身近に暮らしの拠点があることは、とても安心できるのではないでしょうか。また、コミュニケーションの場としての価値もあるでしょう。さらに最近では、コンビニは社会インフラとしての価値も高まっているようです。
セブン&アイ・ホールディングスの「CSRレポート2017」を見ると、「高齢化、人口減少時代の社会インフラの提供」を重点課題の1つにあがっています。今、人口減少によって生活拠点の空洞化が進んでおり、2030年には徒歩圏内に生鮮食品店がない高齢単身世帯数が現在の約2倍になるそうです。そこで同社では、先ほどの買い物支援や食事宅配サービスなどに加えて、自治体との連携協定を進めているようです。
例えば、店舗の中や宅配サービスで訪問した際に高齢者の異変などを察知した場合は自治体と連携して対応すること、また、近年、日本では深刻な災害が起きていますが、災害時の迅速な物資支援、帰宅困難者への水道水やトイレ、周辺情報の支援などの協定が進められています。なお、同業他社でも同様の取組みが見られています。

■人口構造やニーズ変化を脅威ではなく機会に
ここまで、コンビニのサービス面の強化に注目してきましたが、モノでも付加価値を高める取組みが見られます。小分けの食品や惣菜はさらに充実していますし、生鮮食品の取扱いも増えています。プライベートブランド商品の種類も増え、淹れたてコーヒーも人気です。
また、正月にはお節料理が注文でき、節分には恵方巻きが売られ、春には苺のスイーツが売られます。コンビニで、もはや旬さえも楽しむことができます。高齢単身者だけでなく、主婦や家族世帯にとっても魅力が増しています。これら全ての取組みが、伸び続ける売上高の背景にあるのでしょう。
少子高齢化による人口減少が脅威となる業界は少なくありません。一方で、人口構造や世帯構造の変化、消費者ニーズの変化は事業成長の機会にも成り得ます。変化をどう捉えるかが事業成功の鍵となるのではないでしょうか。

※1久我尚子「増え行く単身世帯と消費市場への影響(1)・(2)」、ニッセイ基礎研究所、基礎研レター(2018/5/9、8/21)
※2久我尚子「ひとり暮らしの若者の家電事情」、ニッセイ基礎研究所、基礎研レター(2018/4/16)
※3ローソンの提供するネットスーパー「ローソンフレッシュ」ホームページより

情報源: コンビニ利用客の高齢化?伸び続ける売上高の背景 – MONEY PLUS