定年後に大切なことは「きょういく」と「きょうよう」だとよくいわれます。これは「教育」と「教養」ではなく、「今日、行く」と「今日、用」、すなわち定年になった後も自分の居場所や活動すべきことがあるかどうかを表現する言葉です。
確かにこれらが大切なのは事実ですが、だからといって無理に出かけたり、用事をこしらえたりする必要はないでしょう。もし、何もすることがなくて家に居る方が気楽だというのであればそれもいいのではないでしょうか。テレビを見たり、新聞や本を読んだり、ずっと家で過ごしていても何ら問題はないと思います。

■夫が何もせず家に居ることは妻のストレス
定年後のシニアについて「ぬれ落ち葉」とか「夫源病」という言葉があるように、夫が家にずっと居て、まとわりつくことは妻のストレスになるといわれます。しかしながら、私は「夫が家に居ること」自体がストレスになるのではないと思っています。
すなわち、妻のストレスの原因は夫が家に居ても何一つせず、時間がくれば「メシはまだか?」、妻が出かける際に「いつ帰る?」「晩飯はどうすればいい?」といちいち聞くことがうっとうしいのです。
定年まで長年、家事を何一つやってこなかった夫は妻が三食つくるのが当たり前だと思いがちです。家の掃除や洗濯といった家事も妻がやり、自分はソファに座って何もせずにいるのが常態化していないでしょうか。これでは嫌がられるのは当然です。
ご飯が食べたいなら妻が出かけても自分でつくればいいのです。そんなきちんとした料理でなくてもコメをといで炊飯器にスイッチを入れればご飯は自動的に炊き上がります。おかずも冷凍食品をレンジで加熱すれば済みます。しかも、最近の冷凍食品はビックリするぐらいのおいしさです。それでもつくるのが嫌だというのならコンビニエンスストアでお弁当を買ったり、外食してもいいでしょう。

■料理が苦手なら他の家事をやればいい
料理が苦手という人は他の家事をやればいいのです。部屋の掃除に始まって、風呂、トイレの清掃といろいろやれます。家の中のごみを集めてゴミ出しするとか、服をまとめて洗濯するとか家の用事はいくらでもあります。
一番大事なのはリタイア後は家事を分担してやっていくことです。妻にしてみれば、家事には定年がありませんから、忙しさは変わりません。そんな中で夫が何もせずに家に居ることは神経を逆なでする以外の何ものでもありません。しかも、夫が干渉してくるのでそれまではある程度自由に活動できていた昼間の時間も制約を受けるようになってしまうことに強いストレスを感じるのだと思います。
フットワークの軽い、家事を手伝ってくれる夫であれば、妻はそれほどストレスを感じることはないはずです。それでもストレスを感じるというのであれば、恐らくそれは別の問題でしょうから、よく話し合った方がいいと思います。
いきなり何もかもはできないにしても、できることから少しずつやっていくことで「家事力」をアップしていきましょう。ちなみに83歳になる私の岳父は退職後、毎朝の食事の用意を自分で担当しています。

■長い老後を過ごすには理解と協力が不可欠
定年はいろいろな意味でそれまでの働き方や生き方をリセットするいい機会です。現役時代にごく当たり前だと思っていた生活パターンがリタイア後も同じでいいわけはないのです。変わるのが当たり前です。
人生100年時代といわれますが、100歳まで生きられるかどうかはともかく、現在の平均余命を考えると60歳以降の生活は20~30年ぐらいの期間があります。
退職金や年金といった老後資金が確保できていたとしても、長い老後を穏やかに過ごすためにはそれだけでは十分ではありません。夫婦互いの理解と協力が欠かせないのです。
私自身もできる限り妻と分担して家事をこなすようにしていますし、慣れてくるとそれなりに楽しいものです。仕事をリタイアし、家に居るのであれば場合によっては「専業主夫」になるのも悪くない選択ではないでしょうか。

情報源: 人生100年時代 定年シニアは「家事力」を高めよう|マネー研究所|NIKKEI STYLE