高齢者が財産を家族に贈与したり承継したりするときなどに「信託」という制度を活用する場面が増えてきました。ただ信託の仕組みは独特で、よく理解できないという人が多いようです。具体的な商品をもとに解説します。
まず信託の仕組みをおさらいしましょう。
三菱UFJ信託銀行の友松義信さん(信託博物館事務局長)は、「財産を所有する人がその運用や管理、処分を信頼できる人や専門家に任せる仕組み」と言います。
財産を託す人を「委託者」、信託によって実際に利益を得る人を「受益者」といいます。財産を託される人や機関が「受託者」です。
教育資金贈与信託という信託銀行が扱う商品を例に、それぞれの役割を説明します。
2013年度の税制改正によって、祖父母や父母が、子や孫に対して、教育資金をまとめて贈与する場合、条件を満たすと、受け取る側1人当たり1500万円まで贈与税が非課税となりました。この非課税制度に基づいてお金を管理するためにできたのが教育資金贈与信託です。
例えば祖父があげたお金を、孫が教育以外の目的で使ってしまったら、非課税の恩恵は受けられなくなります。教育資金贈与信託は、教育費の支払いに使うときに限って、お金を引き出せる仕組みにしてあります。
この仕組みでは祖父が委託者、孫が受益者にあたります。受託者となるのが信託銀行です(図)。信託銀行は、「孫の教育資金に充てるために財産を管理、運用し、孫の求めに応じて払い出してほしい」という祖父の依頼に沿って、孫のためにいろいろと仕事をします。 大事な仕事のひとつが、託された財産をしっかりと守ることです。財産は名義上、所有権が信託銀行に移りますが、信託銀行は、固有の財産とは区別して、信託財産を管理するよう義務付けられています。 これを分別管理義務といいます。分別管理をしておけば、受託者である信託銀行が万が一破綻しても、委託者の財産は保全されます。

■増える「民事信託」
信託の仕組みに詳しい武蔵野大学教授の樋口範雄さんは、「受益者のために忠実に仕事をすることも、受託者としての重要な役割だ」と強調します。
教育資金贈与信託の場合、お金を非課税で払い出すことが重要になります。もしも受益者以外の人がお金を引き出そうとしたり、受益者が教育費以外の使途で引き出そうとしたりしても、信託銀行は応じません。
信託という仕組みでは、受託者になれるのは主に株式会社です。多くの場合、通常の銀行業務も行う信託銀行が受託者になります。信託専業の信託会社もあります。
最近では、個人でも受託者になれる「民事信託」という仕組みも普及しています。老齢の親の財産を守るために、子どもが受託者となって管理します。
ただ、受託者が会社だろうと個人であろうと「信託目的に沿って、受益者のために仕事をする基本は変わらない」と樋口教授は言います。この基本的な義務をフィデューシャリー・デューティー(受託者責任)といいます。覚えておいてよい言葉でしょう。

情報源: 財産を非課税で贈与 信託商品使うメリットは?|マネー研究所|NIKKEI STYLE