災害が発生したのち、災害に関連した様々な要因によって健康が損なわれる状態を「災害関連健康被害(災害関連死亡)」と呼びます。最近の地震災害による調査では、高齢者の誤嚥(ごえん)性肺炎が最も多いというデータがあります。食べ物を慌ててのみ込んで、むせてせき込んだ経験はどなたにもあるかと思います。誤嚥性肺炎は、食べ物や唾液(だえき)などと混じって、細菌が気管に入ってしまうことが原因で発症する肺炎です。
高齢者の方は筋力など嚥下(えんげ)機能が低下していますので、そもそも誤嚥を起こしやすいうえに、長期の避難生活による体力の低下は、さらに誤嚥を誘発します。加えて避難所生活では口の中の細菌が増えていると言われています。
その理由として、水の不足や歯ブラシがなくて歯磨きができない、入れ歯を洗浄する方法がない、などが指摘されています。また、入れ歯をなくして十分にかむことができない、日頃食べ慣れている食事の形態と異なる食事が提供されるなど、様々な要因が複合的に関連して高齢者の誤嚥性肺炎を誘発していると考えられます。
近年では避難所生活の中で「口腔(こうくう)ケア」と呼ばれる口の中の環境を整えることと、「食のサポート」が注目されています。日頃と同じようにうがい、歯磨きを行うことが理想ですが、水や歯ブラシがなくても、避難所ではマウスウォッシュ(水歯磨き)が提供されることが増えてきました。
また入れ歯を失った場合には「即時義歯」という緊急的な入れ歯を作製してもらえる歯科チームもあります。避難所で配膳される食事をスープに浸したり、小さくちぎったり切ったりと、食べやすい形状に自分たちで工夫できればよいのですが、それにも限度があります。最近では、嚥下調整食やアレルギー対応など災害時の食をサポートするチームの支援や、嚥下リハビリのチームの巡回診療などの取り組みも始まっています。

情報源: 避難所では口腔ケアを大切に 誤嚥性肺炎の防止を:朝日新聞デジタル