安倍晋三首相の自民党総裁としての任期は2021年9月に満了する。その3年弱の間、政権は国内政策について最初の1年を主に働き方改革に充て、残る2年間に医療・年金の財政問題など社会保障改革に取り組む行程を描く。
しかし高齢期の雇用問題を柱とする働き方改革と、年金の支給開始年齢の引き上げ問題などは不可分の関係にある。議論を切り離すのは理にかなわない。支給開始年齢の引き上げなど社会保障改革にすみやかに道筋をつけ、高齢者就業を促す一体改革が必要だ。
長寿化が進展するなかで、高齢期の就業をより広げる方向に異論はない。問題はやり方だ。
13年の改正法施行に伴い、企業などは希望者すべてを65歳まで雇うよう義務づけられた。政策の看板に「人生100年時代構想」を掲げる安倍政権は、さらに70歳までの就業確保をめざす考えだ。
だが産業界をどう導くのかは判然としない。仮に雇用延長を一律に押しつけるなら、産業界の活力をそぐ懸念もあり賛成できない。
心身の具合から保有資産の多寡まで、個人差が大きいのが高齢期の特徴だ。私たちは継続雇用の義務づけよりも個々人の意志で職を移りやすい労働市場をつくる改革を訴えてきた。職業紹介の民間開放、金銭補償を伴う解雇規制の緩和、年齢差別の是非――などだ。
首相が議長をつとめる未来投資会議は、これらの実現にこそ率先して取り組むべきだ。規制改革会議との連携が不可欠である。
同時に、首相が来夏の参院選後に着手するという社会保障改革との一体化が必要だ。厚生年金の2階部分は支給開始年齢を引き上げる途上にある。65歳に到達するのは男性が25年、女性は30年だ。
海外に目を向ければ、英国は68歳、米独は67歳支給開始へ改革を推し進めた。日本人はより長命だ。たとえば70歳支給開始へ向け、スピーディーな改革を求めたい。
それと並行して労働市場の柔軟性を高めれば高齢期の雇用はおのずと促進されよう。離職から年金受給までに空白期を生じさせないことにこだわり、産業界に人件費負担を求めるのは乱暴である。
個人型の確定拠出年金や、不動産資産を担保に金融機関から年金などとして融資を受けるリバースモーゲージなど、空白期を補う手段はある。人生100年を見すえて銀行、信託銀行、証券会社などが知恵を絞るときだ。

情報源: 年金改革を急ぎ高齢者の就業につなげよ:日本経済新聞