冬のトイレは危険がいっぱいだ。突然気を失い倒れてしまうことがあるからだ。いきんで排便しているときに心臓や脳の血管が詰まったり、破れたりすることもある。おしっこをしている途中に気を失うこともある。トイレの個室で気を失い、誰にも気づかれずに朝冷たくなって発見されないとも限らないのだ。トイレで“遭難”しないためにはどうすればいいのか? 弘邦医院(東京・葛西)の林雅之院長に聞いた。

■水分と野菜で便秘を解消
「冬のトイレで一番気をつけなければならないのは便秘です。冬は空気が乾燥し、暖房もつけっぱなしになるので体内が脱水症状になりやすい。すると、大腸内の水分が減って便が硬くなり、便秘になりやすいのです。排便時は軽くいきんだだけでも最大血圧が60~70㎜Hg上昇するとの報告もあり、便秘は想像以上に脳や心臓の血管に負担をかけるのです」
便秘の人はそうでない人に比べて心血管リスクが高いといわれており、心筋梗塞や脳卒中を発症しやすいことがわかっている。実際、突然死全体のうち5%は、高齢者のトイレでの脳卒中や心筋梗塞が占めるといわれ、心疾患による突然死の約8%がトイレでの排便中に起きている。
「便秘気味の人は水分はもちろん、キノコや白菜や春菊のような食物繊維たっぷりの野菜を意識して取ることが大切です。納豆やヨーグルトといった発酵食品もお通じを良くします」

■おしっこは座ってする
お酒を飲んだときなど、話に夢中になり過ぎてギリギリまでおしっこを我慢する人がいるが、やめた方がいい。
お酒の利尿作用も手伝って、一度に大量の排尿をすると失神するリスクが高くなる。
「おしっこをギリギリまで我慢していると血圧が上がります。それが一気に排尿されると血圧は急激に下がります。さらに、膀胱内の尿が一気に減ることで腹圧も下がる。すると迷走神経反射が起こり、心臓に戻ってくる血液が減って脳が虚血状態になり失神することがあるのです。排尿失神と呼ばれるもので、血流不足で脳の細胞が壊れないように体の活動を強制終了させて脳を守る仕組みです」
排尿失神が怖いのは、意識を失ったときに便器や壁、床に頭や顔を打ちつけたりする危険があるからだ。
「そうならないため、おしっこは我慢せずに、ちょくちょくトイレに行くことです。万一のことを考えて男性でも立ちションはやめて座っておしっこをしましょう」

■トイレを暖める
トイレは家の北側に設置されていることが多く、暖かい居間や布団の中からトイレへ移動すると体は熱を奪われまいとして血管が縮み、血圧が上がる。そこで、排尿・排便で血圧を急に上げ下げするとお風呂同様ヒートショックを起こしかねない。トイレはできるだけ暖かくすることだ。
「理想は温熱ヒーター付きの便座ですが、すぐには用意できない人もいると思います。そのときはトイレに電気ストーブなどを入れるのも手です。床にホットカーペットを敷くのもいいでしょう。冷たい便座を避けるため便座カバーも利用しましょう」
トイレの窓は冷気が伝わりやすい。カーテンや断熱フィルムを張るなどして対策をしておきたい。
夜中や明け方にトイレに行くときはパジャマに裸足を避け、ガウンにスリッパなど防寒して向かうことが大切だ。

■急に立ち上がらない
排便でいきんだ後、急に立ち上がると血管が広がって、血圧が急激に下がって体がふらつくことがある。下手をすると頭や体をぶつけてケガをすることも。手すりなどを持ってゆっくり立ち上がることだ。

■周りに行き先を告げておく
トイレに行くときは、できるだけ周りの人に「トイレに行く」と告げることも重要だ。
トイレの個室で心筋梗塞や脳卒中、排尿失神などで倒れても、「アイツ、トイレに行ってなかなか帰ってこないな」と周囲が気づけば助けてもらえる。
50代になると半分の人は高血圧症となり、女性の半分は脂質異常症となる。もともとメタボ症候群がある人や生活習慣病を持っている人は50代で心臓血管病や脳卒中のリスクが高まり、健康な人でも60代には同様のリスクを抱えると考えられる。だからこそ中高年は冬のトイレを甘く見てはいけないのだ。

情報源: 心臓や脳に大きな負担 冬のトイレで“遭難”しないための5カ条 – 日刊ゲンダイ ヘルスケア