医療人類学は、近代的な生物医学を相対化しながら、患うことと健康にかかわる広範な実践を研究対象としてきた。ただし、相対化の前提にある疾病/病いという二項対立は現代世界において有効性が薄れてきている。そこで、ケアという概念を用いることで、この二項対立にとらわれない視角から医療とその周辺の現象について考えていく。例えば、保育や介護をはじめとして、誰がどのような対象をケアすべきであるのかという問いは、政治経済的な制約を道徳に変換する言説として機能してきた。一方で、ケアは科学技術を具体的な人間関係に基づいて経験する実践でもある。医薬化や新自由主義の進展といった今日では地球各地に遍在する現象を題材として、医療をめぐる二項対立的な理解を問い直していく。

11月19日(木) 6:00~6:45 (45分) 放送大学on
番組情報:「人新世」時代の文化人類学 第8回「医療とケアの民族誌」